風の色

風の色(三十四)
2022.04.24

風の色(三十四)
「できるのだからしなければならないこと、できるのだからしてはならないこと」
これは、一週間分の壁掛け式の日めくりの一部(木曜日のテーマは《精進》)である。
毎朝、食事前にこの言葉に接する度に心新たにしている。
かつて、唱題行修行の最中に、化主の権藤上人から法華経の最第一の修行は、自我偈(法華経第十六章壽量品の偈文)の中にある『一心欲見佛、不自惜身命』(一心に佛を見たてまつらんと欲して、自ら身命を惜しまず)に尽きるとの言説に深い感動を得た。
いつも佛(ご本佛)の子であることを心に忘れなければ、決して身命も惜しむこともないのに、惜しむ心が涌くのは、佛子の自覚が無い証拠である。
だから佛の御意に叶うような生活を心がけ、鏡に映ったわが姿を佛がその奥から慈悲の眼で看ていることに気がつかなければならないと。
冒頭の前段の言葉は、誰しもがそれぞれの役割に応じて等しく与えられているこの世での使命を全うすることであるが、後段の言葉は、なかなか難しいが、要は、自らが佛の子であることを忘れずに精進せよとの親心と思っている。
今も私の心のどこかに「できないからしてもよい」という甘えがある。
むしろその方が楽でよいが、虚しさだけが尾を引いて離れないのが現実。
所が、法華経の修行観は、暗に辛いことの中に既に真の安楽の種子が含まれていることを示唆している。
だからこそ、この葛藤を超えねばと、この言葉の意味を噛みしめている。