風の色
- 祈りと信仰(十)
- 2023.01.22
祈りと信仰(十)
今の世界情勢は激変の一途を辿っている。
特にソ連のゴルバチョフ大統領がペレストロイカ(改革・世直しの意)を提唱してから早五年の歳月が流れようとしている。
東欧諸国も西欧に目を向けはじめた。そこに共通する人々の心は自由で開かれた政治と豊かな社会への憧れを示している。
さて、世界は、時々刻々飢餓で尊い命を失っていく国もあれば、わが国のように世界一の金持ち国もある。
かつて二十数年前のこと、繁栄の絶頂にあったアメリカ合衆国の或る市民が、崩れゆく家庭の有様を見て、「すべてはお金が物語っている」と。漏らした言葉は、今の私たち日本人にとって他人ごととして済まされまい。
金銭欲の裏では、家庭の崩壊、無軌道で自由な振る舞いの氾濫、陰湿な犯罪、教育の荒廃等々行く末を恐れぬものはない。
実は、ソ連や東欧諸国も同様な問題に悩んでいる。とすれば、今や世界の人が心のペレストロイカを自己に問わなければならない時と思う。
所で、釈尊やキリストやマホメットが今の世界をご覧になったらどのように言われるだろうか。
どの聖人も口を揃えて「我々の時代と何一つ変わっていない」と言われるに違いない。
そして「人類の歴史は時間と共に同じことを繰り返していたに過ぎない」と。
或る著名な方が、この世の乱れは「宗教」が発展しないのが原因と言った。
果たしてそうだろうか。
もともと「宗教」なるものは発展するものでなくいつでもどこでも永遠に存在するものである。
もともと汝自身が関わらないだけである。
信仰は、まさにその存在を解く鍵と言える。