風の色

久遠のみち(十一)
2022.10.16

久遠のみち(十一)
お陰様で、当山の庫裡の建設工事が当初の予定より大幅に延びたものの完成するまでの間、何一つ魔障なく円成させて頂いたのは、御本佛様の大慈大悲の御守護とお導きの賜と深く感謝している。
今は、周辺の環境整備を残しながらも徐々に什器備品を整えつつ諸行事等に使わして頂いている。
そもそもこの庫裡建設の事業は、二十年前より発願し続けてきたもので、様々に紆余曲折を経ながら機の熟するのを待つ思いであった。
時恰も、宗祖日蓮大聖人立教開宗七五〇年を迎えるに当たり、念願の事業を当山の慶讃記念事業として是非とも実現したいと思い、平成八年に有縁の檀信徒の皆様にご理解とご協力を求めたもである。
思えばこの事業を遂行するについて、多くの皆様にとって、百軒足らずの檀家で、しかもこの不景気な時期に、敢えてこの事業を始める事に大きな抵抗と疑問を持たれたのも無理からぬ事と拝察していた。
然し、私はこの事業の発願した時から、必ずや円成することを信じて止まなかった。
それは法華経を信じ御題目を唱える人々が依処とする道場が建たない事はないとの固い信からである。
一方、浄財を寄進されるおひとりおひとりが、本来から地涌の菩薩としてこの世に生を享け、またとないこのような浄業に出会い、法華経実践の道場を建てる為に、それぞれ異なった姿や思いを持ったとしても必ずや佛業を修められる尊い菩薩集団であることへの信でもあった。
日蓮大聖人の「法華経の行者の祈りの叶わぬことはあるべからず」との御教示を素直に信じ、皆様と共にその「信の一字」の祈りによってその心願が御本佛様の御心に届いたからに他ならない。
この至心の祈りによってこの世に浄土を開いてくれる事が何より「久遠のみち」につながるものと思っている。